宿のキャンセル・返金・無断不泊への対応方法|決済・在庫・記録の実務手順

宿主とスタッフがキャンセルされた予約の状態、客室在庫、返金、操作記録を順番に確認するイラスト 予約・決済

宿泊予約のキャンセルを受けたとき、予約を消すだけでは処理は終わりません。客室在庫、決済、返金、宿泊者への連絡、会計記録も一致させる必要があります。

無断不泊では、宿泊者が来なかったからといって、確認せずカードへ請求してよいわけではありません。予約時に提示したキャンセルポリシー、宿泊者の同意、決済サービスの条件を確認し、人が請求を承認します。

この記事では、法律上の個別判断ではなく、小さな宿で処理漏れを防ぐための実務手順を解説します。規約や請求の適法性に疑問がある場合は、決済会社、予約サービス、専門家へ確認してください。

予約を削除せず「状態」を変更する

原則として、キャンセルされた予約を管理画面から完全に削除しません。次の状態を区別して履歴を残します。

状態 意味 主な次の処理
宿泊者都合キャンセル 宿泊者から取消依頼 キャンセル料判定、返金、在庫開放
宿都合キャンセル 施設側が宿泊を提供できない 全額返金、代替案内、在庫停止
日程変更 別日へ移動 新日程確保、差額、旧在庫開放
無断不泊 連絡なく到着しない 連絡確認、ポリシー確認、請求判断
決済失敗 支払いが完了しない 予約保留・取消、再決済案内
返金処理中 返金操作済みで完了待ち 決済画面と明細を後日確認
返金完了 返金結果を確認済み 記録を閉じる

削除すると、誰がいつ何を判断し、なぜ返金したか追えなくなります。

処理する順番を固定する

キャンセル連絡を受けたら、次の順番で処理します。

  1. 予約を特定する
  2. 本人と依頼内容を確認する
  3. 予約時に適用されたポリシーを確認する
  4. キャンセル料と返金額を計算する
  5. 責任者が金額を承認する
  6. 予約状態を変更する
  7. 客室在庫の戻り方を確認する
  8. 元の決済に対して返金する
  9. 宿泊者へ内容と反映目安を通知する
  10. 決済結果と操作記録を後日照合する

予約経路によって、OTA管理画面から操作すべき場合と、宿側の予約システムで操作する場合があります。宿泊者へ「OTAから手続きしてください」と案内する前に、どちらが正式な受付経路か確認してください。

二重予約を防ぐ在庫操作は電話・OTA・自社予約の在庫管理手順で解説しています。

手順1:予約と本人を確認する

電話やメールでキャンセルを受けるときは、少なくとも次を照合します。

  • 予約番号
  • 宿泊者名
  • 到着日と泊数
  • 予約経路
  • 登録済みの電話番号またはメールアドレス
  • 対象となる部屋・人数

メールの差出人名だけで判断せず、予約記録にある連絡先と一致するか確認します。カード番号全体やセキュリティコードを聞いて本人確認に使ってはいけません。

手順2:予約時点のポリシーを見る

現在サイトに掲載している規約ではなく、その予約を受けた時点で宿泊者へ提示した条件を確認します。

  • 無料キャンセル期限
  • 期限後のキャンセル料率
  • 当日キャンセルと無断不泊の条件
  • 災害、交通機関停止、感染症などの例外
  • 返金方法と時期
  • OTA独自の条件
  • 宿泊者が同意した記録

料金プランによって返金可否が違う場合は、プラン名も記録します。画面、確認メール、規約の版など、後から説明できる資料を保存します。ただし、必要以上に個人情報を複製しないでください。

手順3:返金額を二人で確認する

返金額は次の形で整理します。

返金予定額 = 受領済み金額 − 適用するキャンセル料 − 規約上控除できる費用

税、ポイント、クーポン、OTA手数料、決済手数料の扱いは契約と会計処理によって異なります。推測せず、予約サービスと会計担当へ確認します。

計算表の例

項目 金額・内容
予約総額
受領済み金額
無料期限
取消受付日時
適用条件
キャンセル料
返金予定額
計算者
承認者

返金担当者が自分だけで計算・承認・実行・照合を完結しないようにします。小さな家族経営で二人確認が難しい場合も、計算画面を保存し、翌日別の人が照合します。

手順4:予約と客室在庫を更新する

返金より先に、予約状態と在庫の扱いを確定します。

  • 全取消し:全宿泊日の在庫を戻す
  • 一部取消し:対象の部屋・人数だけ変更する
  • 泊数短縮:不要になった日だけ在庫を戻す
  • 日程変更:新日程を先に確保してから旧日程を戻す
  • 宿都合:販売を再開してよいか別途判断する
  • 無断不泊:翌日以降の連泊分をどう扱うか確認する

予約状態の変更がOTAや自社サイトへ反映されたか、空室カレンダーで確認します。返金だけ実行して在庫を止めたままにしないでください。

手順5:元の決済へ返金する

返金は原則として、元の取引を決済管理画面で開き、その取引に対して実行します。

Stripe公式の返金ドキュメントでは、成功済み決済の全額または一部返金が可能で、返金先は元の支払い方法に限られると説明されています。Stripe残高が不足すると、カード返金が保留になる場合があります。

Square公式の返金案内では、全額・一部・商品単位の返金に対応し、カード決済は元の取引日から1年以内と案内されています。QRコード決済は事業者によって期限が異なります。

返金時に記録する項目

  • 元の予約番号
  • 元の決済ID・取引番号
  • 返金額
  • 全額または一部返金
  • 返金理由
  • 操作日時
  • 操作者と承認者
  • 決済画面の状態
  • 宿泊者への通知日時

カード番号を記録へ転記しません。決済IDの扱いも、公開ページや共有チャットへ貼らないようにします。

「返金操作済み」と「返金完了」を分ける

宿側がボタンを押した直後に、宿泊者の明細へ反映されるとは限りません。返金依頼はカード会社などを経て処理されます。

そこで状態を二段階にします。

  • 返金処理中:決済サービスで返金を実行した
  • 返金完了:決済画面で成功を確認し、必要な照合を終えた

Stripeは、まれに返金が失敗する場合があり、失敗イベントを通知すると説明しています。Squareもカード会社によって明細への反映時間が異なると案内しています。

宿泊者へは「返金しました」だけでなく、金額、返金先、カード会社側で反映まで時間がかかる可能性を案内します。具体的な反映日を保証せず、確認先も伝えます。

日程変更は取消しと新規予約を混同しない

日程変更では、次を同時に整理します。

  1. 新しい日程の在庫
  2. 新旧料金の差額
  3. 新しいキャンセル条件
  4. 追加請求または一部返金
  5. OTA・予約システム・決済の表示

古い予約を先に取消すと、その間に新しい日程が売れる場合があります。新日程を確保し、変更内容を確認してから旧在庫を戻します。

宿都合キャンセル

設備故障、災害、営業上の事情などで宿泊を提供できない場合は、宿泊者都合と同じキャンセル料を自動適用しません。

  • 宿泊を提供できない理由を記録する
  • 宿泊者へ速やかに連絡する
  • 受領済み金額の返金を確認する
  • OTA経由なら所定の手続きと連絡先を確認する
  • 代替宿の案内可否を検討する
  • 対象客室を販売停止にする

補償や追加費用の扱いは状況と契約によって異なるため、独自判断で約束せず、必要に応じて専門家へ相談します。

無断不泊はすぐ請求せず確認する

チェックイン予定時刻を過ぎても到着しない場合は、次の順番で対応します。

  1. 予約記録と到着予定時刻を確認する
  2. メール、電話、OTAメッセージを確認する
  3. 宿泊者へ安全に配慮した連絡を試みる
  4. 交通障害や災害情報を確認する
  5. 連絡時刻と手段を記録する
  6. 規定の時刻に責任者が無断不泊と判定する
  7. 予約時のポリシーと同意記録を確認する
  8. 決済サービス・OTAの手順に従い請求を判断する
  9. 翌日以降の連泊在庫をどう扱うか決める

Squareの宿泊施設向け案内は、無断不泊・キャンセル料も購入者が異議を申し立てられ、カード会社の判断でチャージバックになる可能性を説明しています。予約時にポリシーを明確に提示し、同意記録を得ることが重要です。

「カード情報を保存してあるから請求できる」とは考えず、その決済が無断不泊請求に対応し、宿泊者の同意を確認できるかを先に確認します。

オーソリと売上確定は別

カードの利用枠を一時的に確保するオーソリ(与信)と、実際に売上を確定する処理は同じではありません。

Stripe公式ドキュメントでは、対応する決済方法で承認と売上確定を分けられる一方、承認には有効期限があり、期限前に確定しないと資金が解放されると説明しています。日本のJPY建て対象カードで最長30日の案内もありますが、カード種別や条件が異なります。

宿泊日より何か月も前の予約を、通常の短期オーソリだけで保証し続けることはできません。予約システムと決済会社が宿泊用途へ提供する正式な方法を使います。

チャージバックへ備える記録

キャンセル料や無断不泊料を請求しても、宿泊者がカード会社へ異議を申し立てることがあります。次を過不足なく保管します。

  • 予約日時と予約経路
  • 宿泊プランと料金
  • 提示したキャンセルポリシー
  • 宿泊者の同意記録
  • 確認メールと重要な連絡履歴
  • キャンセル受付日時
  • 到着予定時刻と連絡を試みた記録
  • 請求額の計算根拠
  • 返金・請求の操作記録

保存期間とアクセス権を決め、必要がなくなった情報は適切に削除します。カード番号やセキュリティコードを証拠として保存してはいけません。

スタッフ権限を分ける

作業 受付担当 責任者 照合担当
取消依頼の受付
キャンセル料の計算 確認
金額の承認
返金実行 制限
無断不泊の確定
翌日の入金照合

Stripe、Square、予約システムの管理画面には2段階認証を設定し、退職者のアカウントを速やかに停止します。ログイン保護はWordPressのBASIC認証・2段階認証も参考にしてください。

毎日の未完了一覧

営業終了前に、次が0件か確認します。

  • 取消受付済み・予約未変更
  • 予約取消済み・在庫未開放
  • 返金承認済み・未実行
  • 返金処理中・結果未確認
  • 日程変更済み・差額未処理
  • 無断不泊候補・責任者未確認
  • 宿泊者への通知未送信

件数が0でない場合は、担当者と次の確認時刻を記録します。

AIへ確認表を作らせるプロンプト

小さな宿のキャンセル・返金・無断不泊の確認表を作ってください。
予約経路は[OTA名、電話、自社サイト]、決済は[サービス名]です。

次を別々の手順にしてください。
- 宿泊者都合の全取消し
- 泊数・人数の一部変更
- 日程変更
- 宿都合キャンセル
- 無断不泊
- 決済失敗

各手順に、本人確認、適用規約、計算、承認、予約状態、在庫、決済、通知、翌日照合を含めてください。
サービス固有の条件は公式資料だけを使い、不明なら「要確認」としてください。
実在の予約情報、カード情報、APIキーは扱わないでください。
AIだけで請求や返金を実行する手順にはしないでください。

本番前テスト

架空予約と決済会社のテスト環境で、次を試します。

  1. 無料期限内の全額返金
  2. 期限後の一部返金
  3. 一部屋・一名だけの変更
  4. 宿泊日の変更と差額請求
  5. 宿都合の全額返金
  6. 返金失敗または保留を想定した引き継ぎ
  7. 無断不泊判定から記録まで
  8. 別のスタッフによる翌日照合

決済方法の選定はStripe・Square・予約システム標準決済の比較をご覧ください。

まとめ

キャンセル処理は、予約画面の「キャンセル」ボタンだけでは完了しません。

  • 予約時に提示したポリシーと同意記録を確認する
  • 予約状態、客室在庫、決済、通知を同じ順番で更新する
  • 返金額は計算者と承認者を分ける
  • 返金処理中と返金完了を区別する
  • 無断不泊は連絡と規約確認後に責任者が判断する
  • カード番号を保存せず、元の決済へ返金する
  • 未完了一覧を毎日0件にする

まず、直近のキャンセル一件を見て、予約、在庫、決済、通知、記録の五つが一致しているか確認してください。

参考資料

※決済条件、返金期限、カード会社の規則は変更されます。この記事は2026年8月16日の公式情報を基にしています。個別の請求・返金は、予約時の規約、契約先の条件、専門家の助言を確認してください。

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